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先日、知り合いから、「きものが好きだと聞いたから、譲りたいものがあって」
という連絡があり、さっそくその知人宅へ遊びに行きました。 見せられたのは、訪問着。 もうあんまりよく覚えていないのですが、地色はグレーで、一部ぼかしがあり、 花柄の一部は刺繍が施されています。 洒落てるー。実に洒落てる。 「(たしか)45万円で買って、一度着たんだけど、もう着ないから。 アナタならサイズもぴったりだと思って。この袋帯も一緒で4万円でいいわよ」 はららー。 きものを着ること、色んな人に言っておくと、こんなことに恵まれます。 一瞬ぐらっときました。 でも、でもなー。ハタしてわたしに訪問着で出かけるような先はあるのか? ふだん出かけるときは木綿か紬。 おめかししようと思ったら、小紋。 ちょっとかしこまろうと思ったら、一つ紋を入れた色無地か江戸小紋。 華やかなとこには昔の付下(ピンクの地色に源氏香)。 これですべて賄えています。 訪問着が入り込む所は、この「一つ紋入り色無地・江戸小紋」ステージですが、 このステージのきものは、ふだんからそんなに着ない。 今あるものでも着きれてないのに、さらに在庫が増えることになったら。 「このきものは、すごくすごくステキだと思うんだけど、 わたしには訪問するトコなんてないんだよー。 稀に訪問するトコができたときのために、 色無地も江戸小紋も紋を入れたんだよー」 「そう言われてみりゃ、そうだわね」。知人は笑って理解してくれました。 これは、きものの好みの影響が大です。 わたしは、ベースとなる長着は渋めに、帯でアクセントをつける、という 組み合わせが好きなのです。着ていてもしっくりくる。 絵羽模様の訪問着をほしいと思ったことがないのです。 前に書いたなじみの呉服屋さんでも、ときどき番頭さんから、 「tatangちゃんも、そろそろ訪問着つくったら?」と言われます。 ずっと前にきものともだちが、ふらりと立ち寄った呉服屋さんでも、 友禅の訪問着を勧められ、なんとなくその着になって頼んじゃった、 ということがありました。そのともだちは、翌日には目が覚め、 「さっそくクーリングオフしたよー」と言ってましたが。 オナゴの華は訪問着なんでしょうね。 華やかな場所に行く機会が多いとか、外国でパーティに出るとか、 そういうときは、訪問着がきっと喜ばれると思います。 (行ったことないので、あくまで推測) 一方、そんな機会はないと予想されるが、例えばですよ、 この秋にともだちの結婚式があるからきもので出席したいんだけど、 何を買ったらいいのだろう、と悩んでおられる方でしたら、 訪問着でも色留袖でもなく、 一つ紋を入れた色無地か江戸小紋(鮫・通し・行儀のいずれか)をすすめたい。 格の高い袋帯を合わせれば略礼装として結婚式に出られ、 袋帯でも洒落袋、あるいは少し格のある名古屋帯を合わせれば、観劇などに最適。 なんか同じこと、前にも書いたような…。 要するにわたしは、色無地・江戸小紋好きってことなんですな。
この前書いた『浴衣の目安』では、冒頭の
「浴衣姿でどこまで行っていいの?」 「平塚から渋谷まで、浴衣で行っていい??」 という、友人からの質問に、明確に答えていませんでした。 ちなみにこの友人はオーバー・サーティ。 Q:浴衣姿でどこまで行っていいの? A:高級浴衣ならどこまででも。ただし、長襦袢着て、足袋まで履いた場合。 ごくふつーの、コーマ地の浴衣だったら、 昼間は電車・バスに乗らないで行ける範囲に とどめておいたほうが、オーバー・サーティらしいエレガントさがあるかも。 でも、大きなお祭りや花火大会なんかがあるんだったら、 電車・バスに乗っても構わないと思う。 Q:平塚から渋谷まで、浴衣で行っていい?? A:高級浴衣でないんなら、昼間はやめろーっ!やめるんだーっ!! 夕方~夜なら、ふつーの浴衣でもいいかもしれないけど、 着崩れたり、しわになったりが心配です。 糊付けして、浴衣をできるだけパリッとさせておくのをおすすめするよ。 腰紐がゆるまないように気をつけて着てねー。 友人にだったら、こんなふうに答えます。
「浴衣姿でどこまで行っていいの?」
「平塚から渋谷まで、浴衣で行っていい??」 花火大会のことも気になる昨今、友人からこんなことを尋ねられました。 わたしも以前は、「昼間から浴衣を着ていていいんかい?」と悩んでいました。 そこで先生に訊ねたところ 「いいに決まってるじゃないの~。浴衣は夏の普段着。 洋服だったらジーンズとTシャツくらいの位置付けよ」とのお答えが。 あら~、そんなカンタンなことだったのねー。 ところが、誰からかどこからか何からかは忘れたけれど、 こんなことを聞いたか読んだりもしました。 「浴衣は湯上りにひっかけるように着るもの。 昼はもちろん、夜も遅い時間に着てるのだっておかしい」 レレレ? そうなの?? でもなぁ、江戸時代に、町場の人がそんなに何枚も重ね着してるはずないよなぁ。 ヘタしたら冬に浴衣みたいなの着てた人だっているんじゃないの? そこんとこ、どーなんでしょう。で、軽く調べてみました。 以下『広辞苑より』 【浴衣(ゆかた)】 ①「ゆかたびら」の略。 ②おもに白地に藍色で柄を染めた、夏季に着る木綿の単衣。 【湯帷子(ゆかたびら)】 入浴の時または入浴後に着る単衣。ゆかた。ゆぐ。ゆまき。身拭(みのごい)。 なるほどねぇ。 そこでわたしは、自分用にこんな目安をつくりました。 ①夏は朝から晩まで浴衣を着てていい。 ②できれば昼間は薄い色、濃い色は夜に着る。 ③出かける範囲に合わせて、浴衣の素材を変える。 「浴衣」といって思い浮かぶのは、柄が染められた綿の薄くやわらかい生地。 あれは「コーマ(綿コーマ)」というそうです。浴衣のなかで一番カジュアルな感じ。 なのでわたしは、家で過ごすときや、近所に出かけるとき用にしています。 帯は半幅を文庫結びか貝の口に。 電車やバスに乗って出かけるときは、コーマではなく、 縮(ちぢみ)という、同じ綿でも、しぼしぼした生地の浴衣に替えています。 最初は長襦袢を下に着る、夏の長着としていたものを、 浴衣としても着ているということです。 (こういうのは「高級浴衣」といって売られているそうですが、 反物から仕立てても3万円でおつりがきました) 麻や綿の無地の半幅を貝の口に結び、幅が狭く長さも短い帯〆(三分紐)を締めます。 三分紐を締めるのは、帯留をしたいから。帯留でアクセントをつけ、 「お出かけ用ですのよ」という感じを出す。 浴衣のときは素足に下駄。 長襦袢を着るときは、下駄でも足袋を履く(夏用のカジュアルな草履も可)。 どこか建物に入るときは、足袋を履いた姿=長襦袢を着たきもの姿で出かける。 ほぼ屋外オンリーのときは素足に下駄=浴衣。 わたしと同年代(30代中頃)の方で、「今年浴衣で出かけたい」と思ってる方には、 コーマ地ではない浴衣をおすすめしたい。 わたしは今のところ縮しか持っていませんが、綿紅梅・絹紅梅など、 ちょいと調べたら綿芭蕉・綿紬なんてのもありました。 色柄も落ち着いていて、我らにはしっくりと着心地がいいと思います。
ここまで、「きものを着たいと思っても、とりあえずは買わないで済ます」
という方向で、話を進めてきました。 でも、全部がお下がり、というのもいまいち心が踊らない。 お金のかかる長襦袢・長着・帯はあるものを着けるとしたら、 帯揚・帯〆は新しい物をつける。買う! 大きな買い物をしたくなったときは、まずは小さい買い物で購買欲を満たし、 心を落ち着かせる→衝動的な(大)出費を防ぐ。この公式でいきましょう。 そのうち詳しく書こうと思っていますが、帯揚。 綸子か縮緬のものを買うといいと思います。 中抜きの絞りの帯揚は、ふっくらと結びやすいので、 色無地や小紋など、染めのきものにはおすすめです。 一方、紬とは調和しません=つけられない。 綸子・縮緬なら、染め・織り、両方のきものに合わせられます。 帯〆は、ゆるぎ組み、という一色のものをおすすめしたいです。 わたしも最近はこればかり買っています。 染め・織り、両方の長着・帯に合わせられます。 そして何より締めやすい。 帯揚・帯〆はセットでも売っています。 わたしはこの頃、帯揚・帯〆を同じ色で揃えるのが好きです。 とくに、長着・帯とも、淡い系の色のときに、きりっと濃い色のものを合わせると、 全体の印象も引き締まるように思います。 なお、小物の中では、唯一、帯〆のみ「格」があります。 と書くと難しいように感じますが、「礼装を除き、金糸銀糸の入ったものは避ける」 と覚えておくのがカンタンかと思います。 帯〆の話も、いずれもうちょっと詳しく書くつもりです。
きものの分類が終わったら、帯も分類してみます。
「きもの1枚に帯3本」といわれるほど、きものは帯によって色々な着方が楽しめます。 その割に、きものに比して集まってくる数は少ない、わたしの場合。 帯のほうが、年齢を問わず長く着用できる、ということなんでありましょう。 ご実家からきものをいただいた場合は、たいてい帯とセットでくると思います。 帯揚・帯〆も一緒かもしれない。こういうときは安心ですね。 そうでないとき。きものと帯を別々にいただいたとき、どう合わせればおかしくないか。 きもの・帯・帯揚・帯〆には、すべて「格」というものがあります。 要するに、フォーマルかカジュアルか、ということです。 手元の帯を見て、地厚に織り上げられていて、古典的な柄で、金糸・銀糸が入っていたら、 それはフォーマル系な帯と判断するほうが無難です。 一方、花や玩具などの柄が描かれている帯(染め帯)なら、カジュアル系と判断。 染め帯はとくに紬と相性がよく、また小紋と合わせることもできます。 ひとつ、染め帯の柄は、季節と対になっていることが多いので注意します。 初夏に松や梅の花は不釣合い、ということです。 なんだかわからない鳥とか、雲とか、季節性を感じさせない柄なら、 帯地の色さえ季節に合っていれば通年着用可能です。 織の帯でも、金糸・銀糸が入っておらず、抽象的な柄が連続しているような帯は、 フォーマルな一つ紋入り色無地・江戸小紋にも、 紬や小紋など、カジュアルなきものに合わせることができます。 慣れるまでは難解なパズルのようです。 こればかりは、きものと帯、実際に見て合わせてみるのが解読の近道です。 『美しいきもの』『きものサロン』というマダム系2大きもの雑誌では、 きものと帯の合わせ方特集が組まれることがあります。 フォーマル・ややフォーマルなきものも着たいと思っている人には参考になります。 どちらも季刊で2000円くらい。古本屋さんでも結構見かけます。
実家やら身内やらからきものをもらったら、それを仕分けねばなりません。
まずはきものとして着られるかどうか。ポイントは3点。 ①裄(ゆき)が足りているか 裄とは、おおまかにいうと、肩から手首までの長さのことです。 着てみて、袖口が手首のゴリゴリ骨までくれば合格です。 やや短めでも、普段着(小紋や紬など)ならOKでしょう。 かなり短い、となると、着たときにつんつるてんに見えちゃうので気をつけます。 ただ、裄出しといって、実はきものの中に隠されている余分の生地を出して、 裄を長くすることもできます。 余分の生地がどれくらい隠されてるかと、あと、 表に出ている生地はどうしても日に焼けていて、隠れてる部分との差が激しく、 あららー、ってこともあるので、それも心に留めておく。 裄出しも人に頼めばお金がかかりますからね。加工はいずれ、ってことで。 ②丈(たけ)が足りているか おはしょりは人差し指1本分の長さが理想といわれます。 とくに留袖・訪問着・紋入りの無地・江戸小紋など礼装の場合、 ちゃんとおはしょりが出ていることで着崩れしにくいし、きれいに見えます。 普段着の場合は、おはしょりが多少足りなくても大丈夫です。 おはしょりが出ない、ジャストサイズの丈を「対丈(ついたけ)」といいますが、 それでも構いません。ただ、前がはだけやすいという弱点があるので、 対丈のきものを着るときは、いつもより歩幅を控えめにするほうがいいです。 ③身幅(みはば)が足りているか 上前は、脇(左側)の縫い線が身体の側面の中央に来るように下前にかぶせます。 左腕のまっすぐに伸ばして、中指の先がちょうど縫い線の上にくる、というのが目安。 そのうえで、上前をかぶせたとき、右の太腿がきれいに隠れ、さらに右にちょっと余る。 それくらいが理想のサイズの目安になると思います。 多少足りかったり余ったりしたら、脇の縫い線を前後にずらして調節します。 縫い線があんまり前に出ちゃうのもおかしいので、鏡を見て確かめてみます。 そのままで着られるきものがわかったら、それを着たいかどうか、考える。 最初はあまり気が進まなくても、 きものを着る機会が増えると、気持ちは変わってきます。 きものはそれ1枚で完結するのではなく、帯・帯揚・帯〆とセットになって、 初めて表情が決まります。 派手なきものには渋い帯や小物を合わせると、ぐっとおしゃれになったりします。 また、きものとしては着られない寸法でも、長襦袢に加工できるものもあります。 さらに、きものはほどくと、元の反物のサイズに戻る(直線断ちの直線縫い)なので、 きもの以外の色んなものに加工できます(繰りまわし、といいます)。 保管については場所や管理が少し手間かもしれませんが、 いずれ生き返らせることを考えて、 よっぽどのものでない限り、取っておいてほしいなーと思います。
きものを着てどこに行って何をしたいか考えるのと同時に、
自分が何を持っているか、調べてみるとよいと思います。 足袋・裾よけ・肌襦袢・長襦袢・腰紐・伊達締め・帯板など、 目に見えるきもの・帯・帯揚・帯締以外にも、 必要なもの(小物、といいます)は色々あります。 成人式できものを着た人なら、長襦袢以外はたいてい持っているはずです。 手元にはなくても、実家にはあるとか。 この際すべてを新調する、という手もありますが、何度か着てみて、 「きものより洋服のほうがやっぱいいや」ということもありますので、 最初はアリものを使うほうがよさそうです。新しいのはいつでも買えるし。 そして、実家(のお母さん)に小物について尋ねるときは、 ついでに「きもの着ようと思うんだけど、お下がり、なんかない?」と訊いてみる。 おそらく、「どこへ着ていくの?」という返事があると思います。 そこで考えておいた行く先を告げると、 「それなら(お母さんが若いときに着た)付下があるわよ」、とか、 「芝居なら紬でもいいわね」とか、色々塩梅してくださることと思います。 付下とは何か、なぜ芝居なら紬でもいいのか、 そういう疑問はちょいと横に置いておいて、 まずは小物と一緒にありがたく頂戴してしまいます。 わたしは、自分できものを着られるようになる前から、 小紋・名古屋帯・羽織・長襦袢を誂えちゃったのですが、 きものについて色々わかってきた今だったら、 最初から大枚はたくようなことはしなかったろうなぁ、と思っています。 (それらは大変気に入っていて、買ったことに後悔はないのですが) わたしがきものを着る、ということが周囲に知られるにつれ、 色んなところから、きものやら帯やらのお下がりが集まってくるようになりましたので。 まずはお下がりを着るだけ着て、それから本当に自分がほしいものを誂える、 という順番のほうが、よりヨカッタかなぁ、と思うのです。 そうして1枚ずつきものが増えていくにつれ、お出かけ先も選べるようになっていきます。
きものを着たいと思っても、すぐに呉服屋さんに行かないほうがいいかもしれません。
呉服屋さんより、今はネットショップのほうがずっと身近ですが、 それもあまり見ないほうがいい。最初は。 まず、自分はきものを着てどこへ行きたいか、何をしたいのか、 楽しく想像してみることをおすすめします。 歌舞伎、コンサート、芝居。 ともだちの結婚式、何かのパーティ、食事会。 それともふだん着として、それこそ家でもいつも着ていたいとか。 洋服に比べると、きものの値段は桁が違います。 しかも、用途に合わせて、いろーんなきものを揃えておく必要もある。 最初から、自分ひとり(のお金)ですべてを用意するのは難しいです。 きものを着てどこへ行き、何をしたいか。 これを考えておくと、1枚目に買ったきものを塩漬けすることなく、 せっせと着られるようになると思います。 < 前のページ次のページ >
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